机局観戦記


 私は趣味でこっくりさんをやってるんです。いやいや、趣味です。全然強くないですよ。未だにアマの級位者ですから(笑)
 そんなにわか者な私ですけど、尾苦里5段の最近の活躍は本当に、長年のこっくりファンとして胸が熱くなりました。め囲いは現代こっくりではAIによって1段劣ると言われている戦法なのに、それであそこまで相手を圧倒できるのは素晴らしい。プロ入りしてからパッとしなかった時間の長さが、むしろ尾苦里5段の実力を熟成させたと言っても良いでしょう。
 実力があまり振るわなかったころから応援していた身としてはただただ嬉しい。6段になれば降霊が完成し取り殺されてしまうわけですから、死者まであと少しです。来月の死机王戦、会社を休んで観戦するつもりですよ(笑)


―― “意気込みはいかがですか”

忌島「尾苦里5段は非常に粘り強い、歴戦の机士です。過去に勝った机局でも楽に勝てたという記憶はありません。文字通り死ぬ気でぶつかるしかないでしょう」

―― “得意戦法であるぬね弾きはめ囲いとの相性が悪いのではないかと心配するファンもおりますが”

忌島「おっしゃる通り、1字損ぬね弾きはめ囲いと相性的にあまり良い戦法ではありません。当日の戦法については1文字1文字ゼロから見直して、あらゆる角度から再検討をするつもりです。とはいえ、この歴史的な1局にふさわしい、堂々としたこっくりにしたいとも思っています。つまらない誘導戦法はとりたくありません」

――”本日はお忙しいところ誠にありがとうございました”

忌島「ありがとうございました」


【△△新聞 机戦速報】

 XX月〇〇日 午前9時からKKR会館3階にて行われました死机王戦ですが、午後4時25分、223字の熱戦の末に尾苦里5段が投了し、忌島5段の死となりました。勝負後の振り返りでは尾苦里5段が涙を見せるなど、本戦の真剣さがうかがえる白熱した1戦でした。
 午後5時からは忌島死者へのインタビューと表彰、こっくりさんによる締め殺しが行われる予定です。